『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』は、何故ここまで人気なのか?その秘訣を3つの観点から考察します!
本作は韓国でも難しく、それゆえ珍しいとまでされるファンタジーとドラマ、ミュージックを融合させた作品です。これまで幼稚に感じられたり、ドラマファンには響きにくかったりと、制作時間のわりに人気を得られないことから、あまり制作されてきませんでした。そんな中でキム・ソンユン監督は『梨泰院クラス』に続き、再びWEB漫画が原作である本作をファンタジーミュージックドラマという形で成功させ、Netflixの世界ランキングで4位(TV部門/参考リンク参照)を獲得しています。
キャラクターたちが突然歌い踊り出すことに抵抗のある人も少なくない中で、本作がこれだけの人気を集めたのには、異質にも感じられるミュージカルという要素が、作品の世界観を最大限に引き出しているためです。
原作に歌唱シーンはありませんが、ドラマでは繊細な感情表現と非現実的なシーンとの境目をなくすための装置としてミュージカルが使われ、マジックのように作用しています。ファンタジー要素の強い原作なだけに、あえて初めは視聴者が不自然に感じられるミュージカルを取り入れ、その後の違和感を取り除く役割を果たしています。これにより、原作の世界観を損なわず、視聴者へキャラクターたちの感情を伝えることに成功しています。監督はのちのインタビューで、「ミュージカルドラマを作ろうと思っていたわけではない。漫画をどう現実化するか悩む過程で行きついたのがミュージカルであっただけだ。」と語っており、あくまでミュージカルという要素はドラマの演出の一部であることを明言しています。
また、原作はユン・アイが絶望の中にいる時は白黒に、リウルと出会い幸せを追い求める時はカラーで視覚的に感情変化を表す仕掛けがありますが、ドラマではミュージカルという要素を感情表現に利用したことで全てがカラーになっています。監督は「白黒ではなく、カラーでも画面から十分に彼女の無力感、喪失感は伝わってくる」とし、ミュージカルはここでもまた、キャラクターの感情表現において一役買っています。ミュージカルも、タイミングを間違えれば台無しですが、そこはヒットメーカーであるキム・ソンユン監督。作品へのこだわりとセンス、キャラクターへの深い理解から、夢夢しくも共感を呼ぶ構成を見事に作り上げています。
『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』は、数字や成績で全てが評価される現代社会の現実と、夢や希望といったマジックのような非現実を対比させながら物語が展開していきます。マジシャンがマジックをすることは誰かを笑顔にするためですが、ある人はそれを詐欺やまやかしだと言い批判します。作中にも警察や先生がこのように答えるシーンがありますが、ただマジックをマジックと捉えず、疑いの目で見る大人たちの姿は、今の私たちを表現しているとも言えます。多くの苦労や事実を経験した大人は夢を見ることさえ忘れ、毎日忙しく生きています。そんな時、この作品は「いくつになっても夢を見ることができる」という、希望で胸がいっぱいであった童心に帰るきっかけをくれ、「一度立ち止まり、考える時間が必要ではないのか?」というメッセージを視聴者へ投げかけています。
また、親が裕福で、決められたレールを歩んできたイルトゥンは、このレールの先に自分の幸せはないと気づき、マジックの世界に没頭する姿が描かれます。こうしたイルトゥンの考えの変化は韓国の教育熱を風刺するだけでなく、裕福で地位ある人の発言だけが力を持つ社会システム自体も批判しています。このように『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』はファンタジーではありますが、夢や幸せ、希望、お金や地位といった今の韓国の世相に対して問題を提起する、非常に強いメッセージ性を持った作品であることから共感を誘い、特に韓国で高い評価を受けています。
ミュージカル俳優としての経歴ももつ俳優チ・チャンウクが、劇中爽やかながらも苦しく、切ない曲を歌い上げている姿が印象的です。それだけでなく、持ち前の高い演技力で感情の微細な動きや胸を打つ涙の演技まで、最後までシンクロ率高くキャラクターを演じています。チ・チャンウクは本作を選択した理由として、「登場人物の言動や考えが自分のことのように思えたから。」と語り、貧困や成績のストレスに苦しんだ過去を思い出し、俳優ではなく1人の人間として、共感しながら演技に臨んだと言います。
見た目は大人でも大人になりきれない、童心に大きな傷を抱えた魔術師リウル。ファンタジーながらもあまりにリアルなあの演技は、チ・チャンウクの心の底から出てきたものであると言えます。彼の、経験から生み出された表現力豊かな歌声、安定した魂の演技は心動かされること間違いなしです。専門家の指導のもと、3〜4ヶ月にわたり練習したというマジックもお見逃しなく!
優等生のイルトゥンを演じるファン・イニョプは、同じ制服をまとっていてもこれまでとは全く違う優等生役を演じ、「この作品で俳優として一層成長した」と出演の感想を語っています。本作はメインキャストが皆、CGを作り出すためグリーンスクリーンの無機質な空間で長時間演技をしたことで知られており、高い演技力と集中力が必要とされました。また、一曲に対して100回以上撮影したシーンもあり、俳優への負担は相当重かったと音楽監督も語っています。そんな中でもファン・イニョプは、「CGシーンは苦労したが、挑戦であり、良い経験だった」とし、勉強と親のプレッシャーの間で葛藤するイルトゥンの、目の動き一つまで丁寧に演じ、新人とは思えない演技力を披露しています。2021年の話題作『怪物』で注目を集めた主演のチェ・ウンソンも、絶望に打ちひしがれる演技が世界から高評価を受け、演技力の高い俳優陣による熱演は、本作の大きな見どころとなっています。
『アンナラスマナラ -魔法の旋律-』はNetflixが制作したオリジナルシリーズのため、他の配信サービスでは配信されていません。
既に全話配信されていますので、記事を読んで少しでも興味を持って頂けた方は是非Netflix(ネットフリックス)をチェックしてくださいね。
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