赤ちゃんを売る旅からそれぞれの切ない人生と希望が見えてくる韓国映画『ベイビー・ブローカー』

◇ストーリー

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン（ソン・ガンホ）と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス（カン・ドンウォン）。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン（イ・ジウン）が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。

彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。

一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン（ぺ・ドゥナ）と後輩のイ刑事（イ・ジュヨン）は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。
（公式サイトより）

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本作は監督・脚本・編集ともに是枝裕和氏が手がけた自身初の韓国映画。韓国の製作陣、俳優と共に長年温めていた企画から始まりました。子供を育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていくことができるように用意された赤ちゃんポストを巡って出会う人たちの物語を紡ぎます。

『ベイビー・ブローカー』というタイトルから赤ちゃん売買のダークな世界を思い浮かべていたのですが、鮮やかに予想を裏切られました。社会問題に切り込みながらも、ところどころユーモラスで最後には優しい気持になれる激推し作です。とりわけ本作で印象深いを演技を見せたソン・ガンホと女優として大きく進化したイ・ジウン（IU）にスポットを当てました。

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◇カンヌ映画祭主演男優賞に輝いたソン・ガンホの強味

ソン・ガンホが日本で知られるようになったきっかけは南北分断にロマンスを絡めたアクション大作『シュリ』（99）です。韓流ブーム以前、これほど韓国映画が日本で話題になったことはありませんでした。ガンホは韓国諜報機関のメンバーで主演ハン・ソッキュの相棒役でいまよりスリムで気迫のこもった力演を見せていました。