カン・ジェギュ監督にインタビューしたときに、スパイ映画といえばハリウッドでは美男のヒーローが定番なのに、どちらかというと地味なふたりを諜報部員にした理由を聞いたら、「実際に何人もの諜報部員に取材したのですが、全員、ごく普通の人にしか見えない。目立たず群衆に溶け込むような人だったので、ふたりをキャスティングしました」と語っていました。
この名優でありながら、ごく普通の人に見えるのが、ソン・ガンホの強味なのです。1980年の光州事件の実話を基に描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)では、報酬に釣られてジャーナリストを送迎する運転手役に違和感なく扮し、チキン屋の経営に失敗して半地下の家に住み、内職している『パラサイト 半地下の家族』(19)のうだつの上がらない父親も、こんな人いるいるというリアル感で演じていました。
そんなガンホが、本作で演じるのはうらぶれたクリーニング店主サンヒョン。借金で首が回らず、赤ちゃんポストからこっそり赤ちゃんを連れ去り、子供を欲しがる養父母に横流ししてマージンを得ようとするのですが、行き当たりばったりで悪にはなりきれない。離婚した妻と娘とまた一緒に暮らすことを願っているのですが、妻からは相手にされず…。
ただ一度、旅の途中で警察官に尋問された後、制服が縮んだという訴えに、クリーニングの仕方を的確に答えるときの生き生きした姿は仕事に対する矜持を感じさせました。
© 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
コメントしてポイントGET!
コメントがまだありません。推し俳優や推し作品について語りましょう!!
あなたの好きな恋愛ドラマは?