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映画『ヴィレッジ』の横浜流星は、なぜ忘れられない“顔”なのか。6度目のタッグで複雑な感情を表現

■ 魔界のような場所でさえ

(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会

6度目のタッグで、横浜は、能の世界に旅をする(正確には、迷い込む)。この旅で彼は、異界へ足を踏み入れた。能は、舞台にワキ(相手役の語り部)が登場する前、笛が吹かれた瞬間に、現実とは決定的に違う空気が流れる。この瞬間的な肌寒さは、まさに異界を擬似体験するもの。そして全編にみなぎる不気味さは、どこか韓国映画的な空気感とも類似する(冒頭で述べた『DAZED KOREA』のカットにもやはりうっすら寒気がするような透き通った美しさがあった)。

本作で描かれる世界も現実とはとても思えない異様な世界だ。小さな村では人権などなく、村長・大橋修作(古田新太)と腰巾着のようなチンピラたちに牛耳られている。ギャンブル依存症の母親・片山君枝(西田尚美)の借金を肩代わりするため、優が働くゴミ処理場では、非人道的な行為が繰り広げられる。

作業の合間、チンピラのたいくつしのぎの賭け事に駆り出される優は、相手と素手のボクシングをさせられる。命がけの勝負に挑む孤独なボクサーを演じた『きみの瞳が問いかけている』(2020年)での横浜と重なる部分がある。相手のパンチが、「来るぞ」と身構える瞬間の表情には、思わずハッとする。口の中が切れて水でゆすぐときや、付き合わされた飲み会で飲めない酒を飲まされ、外で吐いたあと、タバコを箱からさっと加えて取り出すときの横顔など、こんな魔界のような場所でさえ、どれもこれも素晴らしい表情だ。

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加賀谷健

コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションで...

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