「BTS」Vもリスペクト。CHEMISTRY「a better tomorrow」を聴いて没後20年のレスリー・チャンを想う

■ 香港映画の“永遠の代名詞”

　香港オリジナル版である『男たちの挽歌』は、ジョン・ウー監督の代表作であるばかりか、1980年代に大きな映画的潮流となる香港ノワール映画の傑作でもある。香港ノワールの世界では、ヤクザたちが暗躍し、刑事がそれを追う暗黒街が舞台となる。暗黒街の男たちは、どんなに劣悪な環境下にあろうとも、およそ孤独や仲間への不信など抱くことが決してない。仮に裏切りがあり、互いを憎しみ合い、殺し合いになったとしても、そのことによってかえって仲間の愛を強く確かめ合う。

『男たちの挽歌』の原題が、「英雄本色」。つまり、ヤクザ者（英雄）の本質を意味している。彼らが流す汗の一粒一粒に香港映画の特筆すべき熱量がある。その暑苦しいエモーションがむんむん香る画面が、多くの観客を魅了してやまない。こうしたエモーションを表現するために、当時の香港映画界最高の俳優陣が名演を競い合っている。

　刑事の弟役を演じたのは、若きレスリー・チャン。香港映画界でアイドル的な人気を誇るスーパースターである。ヤクザの兄役のティ・ロンも元はアクションスターで、破天荒な弟分を演じたチョウ・ユンファ（韓国版ではソン・スンホン）も代表的な香港映画俳優だ。レスリーとティ、ティとチョウのそれぞれが男同士の絆を固く結び、それが香港映画の“永遠の代名詞”となった。