韓国版のキム・ガンウに比べ、レスリーが演じたオリジナルの弟キットは、悲しみをより強くまとっている。レスリーの魅力というのは、童顔でチャーミングな容姿だが、それとは裏腹に、どこからか漂ってくる危うげな雰囲気にある。ウォン・カーウァイ監督作『欲望の翼』(1990年)で演じた主人公の破滅的な姿は、まるでレスリーの生涯と重なる。
レスリーが自ら命を断ったのは、2003年4月1日のこと。ホテルの高層階から飛び降りたというニュースは、香港国内にとどまらず、全世界がエイプリルフールの嘘だと信じて疑わなかった。それくらい衝撃的な出来事だった。『欲望の翼』の主人公の顛末のように、レスリーのスター性が行くところまで行き着きいた結果なのかもしれない。
2022年に「BTS」のメンバーVが、『欲望の翼』でレスリーがマンボを踊る場面の動画をInstagramに投稿して話題になった。レスリーが体現した悲しみのスター像は、後世のアーティストからもリスペクトを受けているのだ。『男たちの挽歌』続編である『男たちの挽歌 Ⅱ』(1987年)では、レスリー演じる弟刑事が、クライマックスで敵の殺し屋が放った糾弾に倒れてしまう。若きレスリーが殉死する姿が何とも象徴的だった。
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