映画のなかで33歳のジヨンは、夫と2歳の娘とマンションで暮らす専業主婦。義理親と同居でもなく、IT企業に勤務する夫がリストラされたわけでもなく、夫からDVを受けるわけでもなく、娘も問題なくすくすく育っています。そう表面的には、いたって幸せにしか見えません。でも、心のなかにはずっと不満ややるせなさを閉じ込めてきたのです。
男子というだけでなにかと優遇される弟の存在。「好きな女子だから男子は意地悪する」と発言する教師や愛想よくしただけで気があると勘違いする男にドン引き。どんなに優秀でも女は結婚、出産で辞めるから長期プロジェクトには参加させないという上司。ジョークだと思えない取引先のセクハラ、疲れるだけの夫の実家への訪問、「もちろん子育てを手伝う」と簡単にいう夫。
そう、今を生きる全ての女性が「そういうことがあった」「わかる、わかる」というシーンの連続なのです。
あの原作をどんな風に映画化するか興味しんしんだったのですが、ジヨンの憑依現象を縦糸に、ジヨンがショックを受けた出来事の数々を横糸にして見事なタペストリーを織り上げでいます。そして、ラストが原作と違って希望がある結末というのも、見終わったあと温かい気持になれます。
監督はもと女優で短編映画で注目され、本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。2人の子供の母である彼女の演出は、ジヨンをはじめ女性の登場人物の情感をリアルに繊細に描いています。
ジヨンに扮するチョン・ユミは、名門ソウル芸術大学卒の実力派らしく豹変するキャラを自在に演じ大鐘賞主演女優賞を受賞。
ドラマ『トッケビ』でカリスマ性あふれる存在感を見せたコン・ユが、オーラを完全に消して妻の憑依に苦悩する夫をナチュラルに演じて、ストーリーにより現実味を加えました。
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