新作映画『コンクリート・ユートピア』では、内容的にさらなる次元へ。冒頭からいきなり壊滅したソウルが映される。自然災害によるものなのだが、なぜ壊滅してしまったのか、理由は定かではない。その理由はどうあれ、崩壊以後の物語として、説明なく観客に提示されるショックがまずある。その中で唯一、団地ファングンアパートだけがすっぽり残り、難を逃れる。アパートの住人たちは、ひとまず団結してこの非常事態を乗り切ろうとする。リーダーに選出されたヨンタク(イ・ビョンホン)が、勇敢な行動力で人々をまとめるのだが、彼の統率力は次第にあらぬ方向へ…(しかしここまでやさぐれた姿はパッと見、イ・ビョンホンとは思えなかった)。
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団結とは言え、全体主義的な統治下では、人は知らず知らずのうちに恐怖に飲み込まれる。アパートを守るという大義がいつしかオブセッションとなって、おぞましい恐怖政治が敷かれる。外は極寒の荒地。暖を取るため、アパートに身を寄せる部外者を排除。かくまっていた者は容赦なく罰せられ、忠誠を誓わされる。最初こそ正義感あふれる自警団的な集団だった彼らが、秘密警察のように振る舞うようになれば、これは完全にナチス・ドイツによるユダヤ人狩りのおぞましさにしか見えない。妻・ミョンファ(パク・ボヨン)との幸せを守りたい主人公・ミンソン(パク・ソジュン)も率先して加担する。どちらかというと、弱々しく、心やさしいはずのミンソンがなぜ恐るべき行動に出るのか。
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あるいは、むしろ被支配者として苦虫を噛み潰してきたヨンタクが、今度はトップに君臨するとなぜこんなエゴイズムがむき出しになるのか。ヨンタクやミンソンだけでなく、団地に住む全員に共通するのは、ごく普通の優しげな人々であるということ。いつの時代もこうした人々が、ちょっとした拍子で恐怖を蔓延させ、気づけば暴走した悪の集団を形成してしまうことは、歴史が証明している。そんな歴史の記憶に対して、本作のパク・ソジュンは、どう振る舞うのかと言うと、最終的には自らの過ちを悔いるように、血の通った生身の人間として傷だらけになる。物語全体が現代に対する予言めいたテーマだけに、今回は超人的な預言者ではなく、あくまでひとりの人間を全うしようとする。そんなパク・ソジュンにぼくは感動したのだ。
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