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韓国を代表するイケメン&男気俳優による“最恐コンビ”。『新感染 』を激推しする理由

■ コン・ユの力技にただただ唖然とする

ただコン・ユ扮するソ・ソグは、性格にやや難ありというか、映画冒頭では感情移入がしづらい主人公として造形されている。とにかく利己的なキャラクターで、自分と娘が助かれば他はどうでもいいという人物。それが何とも愛くるしい娘スアンの無垢さによって次第に利他的になっていく感情の変化が魅力的に映る。

愛娘だけでない。強力な、あまりに強靭な協力者がいる。韓国映画界きっての男気俳優マ・ドンソクだ。
全車両がゾンビ化する中、数少ない生き残りのマ・ドンソクが最前線、真ん中にチェ・ウシク、そして後方をコン・ユが守りを固めて、愛する人々が待つ車両まで勇猛果敢に突き進む。絶対安心な存在感のあるマ・ドンソクは途中からほとんど捨て身の肉弾戦を演じる。むさ苦しい男気あふれる様が、精悍なコン・ユとコントラストをなしながら、引き立て役に回る。

マ・ドンソクとコン・ユが力を合わせれば、ゾンビも怯んでしまう最恐コンビだ。このコンビ愛、いつまでも見ていたいと思うのだが、でも残念ながらマ・ドンソクは途中退場することになる。悲しい定めの場面で痛切さが極まる。利他の精神を共有する大切な片割れを失ったコン・ユが本作のラスト、スアンを命と引き換えに守り抜く。画面から目を離すことなくここまで見てきた者はすでに茫然自失の状態。

スアンが「パパ」と何度も泣き叫ぶ姿は、フランシス・フォード・コッポラ監督による『ゴッドファーザー』(1972年)で父親である偉大なドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)を襲撃されて崩折れる次男フレド(ジョン・カザール)の絶望と無力をどこか思わせもする。同作は当時低迷していたハリウッド映画界を救ったブロックバスター大作。韓国映画の枠を飛び越え、世界映画史の名作に接続される本作のコン・ユの力技にただただ唖然とするばかりだった。

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加賀谷健

コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションで...

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