さて、ここで注目したいのが、TXTのアーティスト名だ。夢を共有する者たちが集まり、同じ方向(明日)を向くという意味合いがある。中央の「X」が、明日と夢の共有を掛け合わせる。“よりよい明日”とでも言うべき「Tomorrow」をアーティスト名に含むTXTが、田中がMCの番組に2度も出演したことに、筆者はびびっときた。
というのも、田中圭という俳優を読み解くとき、この「Tomorrow」が最重要キーワードになるからだ。まず思い出さなければならないのは、田中が2018年に出演したジョン・ウー監督作『マンハント』である。同作で田中が演じた悲劇の研究者・北川正樹役は、全編中、回想場面にのみ登場し、現在まで色濃く尾を引く過去を背負い、解き明かす存在だった。正樹の悲痛の声を田中が、繊細な表情の演技だけで表現する。
同作のラスト、W主演の福山雅治とチャン・ハンユーが、駅のホームで名残惜しそうに会話を交わす場面がある。福山の口から思わずもれた「A Better Tomorrow」に筆者のセンサーが働く。この台詞は、「明日があるさ」くらいの意味だが、ウー監督にとっては、代表作『男たちの挽歌』(1986年)の英語タイトルへのセルフオマージュになっている。これをラストの台詞としてさりげなくしのばせておくことで、正樹の無念が晴れて回収される。同時に、田中圭の特性が、「A Better Tomorrow」的な“よりよい明日”へつながるような演技をする俳優だと思うのだ。
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