いや、でも待てよ。基本無表情を自らに課せているかのようにとらえどころがないパク・ソジュンより、むしろアン・ボヒョンの方がひょっとしたらとらえどころがない俳優かもしれない。中卒であることがどこまでも影響して結局どこにも採用されないアン・ボヒョン演じるド・ベマンだったが、大胆不敵な彼に目をつけた有名弁護士ムン・ヨング(キム・ヨンミン)の策略によって、軍の検事になる。5年の契約期限付きで、ムンの右腕となって策を巡らす手腕は見立て通り、ピカイチ。銀行頭取の息子を罠にはめたド・ベマンが、取り調べをする場面。
敵を油断させるためには口角をゆるませて人が良さそうにしていたド・ベマンだったが一転、取り調べ室では冷淡そのものの表情を崩さない。表情といっても、豊かさとはほど遠い、まるで能面のような無表情に近い。一見、無表情だけれど、よくよく見ると、顔の左右を非対称にし、若干硬直させながら、歪ませているようにも見える。もう少しで薄ら笑いになるかという感じ。笑いの寸止め状態が顔にはりついたような。単に強張ってるだけのような。どういう感情なのか、全然わからない。見る者を混乱させ、ゾクッとさせる。怖い。でも、魅力的。この表情を見て、アン・ボヒョンのことを鉄壁の鉄面俳優と名付けたくなる。
軍務中は折り目正しい軍服姿だが、ムン・ヨングの弁護士事務所を訪ねるときには、びしっとスーツに身を包む。こうも完璧な着こなしのギャップは反則じゃないか。そんなことを思っていると、第2話で新任の検事チャ・ウイン(チョ・ボア)が、何人ものクズ男相手に単身で、『イコライザー2』(2018年)のデンゼル・ワシントンばりの世直しを繰り広げる。なんだかこの展開、慌ただしい。チャ・ウインからの除隊プレゼントをもらって、やや翻弄されるラブコメ的な展開もややこしいけど、ド・ベマンのほがらかな表情を垣間見る点では絶好の機会。あるいは、第3話で、悪の化身ノ・テナム(キム・ウソク)と対面したあと、ムン・ヨングとエレベーターに乗るド・ベマンが、再び能面的な底冷えの表情に戻る。一連の表情の変化をアン・ボヒョンの俳優としての最大の武器、最大の特徴とすべきなんだろうけれど、ひとまずは暫定の特異ポイントとして観測しておきたい。この人の真の魅力をとらえるためには、どうもまだまだ観測すべきことが多い気がするのだ。
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