そんな妄想像を可能にしてしまうVの神秘を今さら指摘する必要はない。ミュージックビデオが公開されるやいなや、公開日当日で1500万回再生を回ったことはもちろん驚きだけれど、兵役が控えていたにも関わらず、Vが撮影に参加した事実はもっとすごい。単にアーティスト同士の共鳴といえばそれまでだが、Vの出演には何かもっと神話的な意味が付与されて然るべきじゃないか。
V同様に多忙を極める時期だった『コンクリート・ユートピア』のオム・テファ監督が本作の演出を引き受けた。相手役の男性として「少年的な美しさ」がある人というのがIUとの総意。彼女はすぐにVのことを推し、Vもすぐにオファーに対してOKを出す。こんなにトントン拍子だなんて。ちょっと信じられない。でも確かにVの少年的な魅力にオム監督とIUが注目したのは慧眼だったと言わざるを得ない。Vの名盤EP『Layover』の全トラックを聴いたとき、ぼくはR&B的な感性の極みに接して、とんでもないマチュアな仕事をこの人はやってのけたものだなと思った。
でも一方で、V本人に対して抱く、インマチュア(未成熟)な少年的な魅力も確かにあるわけで。『Layover』の成功は言わば、少年的な魅力の人が、背伸びするわけでもなく、自然と成熟した大人の色気を漂わせながら、ルーツを探求し、表現を完成したことにある。「Love wins all」でもお菓子を頬張って口の周りをよごす無邪気さは少年的な素振りだけれど、オム監督得意のディザスター的舞台に用意した謎のキューブ状の敵に対峙すれば、すぐさま凄みを利かせる。マチュアとインマチュアが奇跡的に共存する姿は、やっぱりワンアンドオンリーであり、神がかっている才能だろう。
コメントしてポイントGET!
コメントがまだありません。推し俳優や推し作品について語りましょう!!
あなたの好きな恋愛ドラマは?