それでもなお、グクについて語るべきことがあるのではないか。まだきっと語り尽くされていないことがあるはず。ぼくらにそう思わせてしまうのが彼の計り知れない才能の所以(ゆえん)であり、我らが黄金マンネたる証なのだ。それでぼくは、グクがリリースした曲中では今のところ一番のお気に入りナンバーである「Standing Next to You」を足がかりに、もう一度ゆっくりと考えてみることにした。
なるほど、全米を制した「Seven」ではアトランタの新鋭ラッパーLattoを、「3D」(9月29日リリース)ではジャック・ハーロウをフィーチャリングアーティストとして迎えていたが、最も華やかなはずの「Standing Next to You」では特にそうしたギミックはなかった。下手なごまかしなく、次なるキング・オブ・ポップの称号に相応しい姿を虚飾なくストレートに発信してきたと受け止める一方で、いやいや、やっぱりここにもサプライズは用意されていた。グク入隊直後の12月15日、BTS公式YouTubeチャンネルに公開されたのが、同曲の“Usher Remix”だ。ミュージックビデオを見ると、華麗なダンスパフォーマンスで曲を歌いきり、カメラはぐわぁっと一気に引いていく。するとフレームインと同時に両手をあげる人物(華麗なステップのボーカリスト!)が声を吹き込んでくるではないか。
この激的スウィートなボーカルの持ち主こそ、リミックスタイトルのアッシャー(Usher)だった。待ってくれ、ここにきてアッシャーを招聘する意味って一体、どういう事態が起こっているんだ。16歳でデビューし、テディ・ライリー、ベイビーフェイス、ジャーメイン・デュプリの最強プロデューサーグループが手がけた2ndアルバム『My Way』(1997年)が特大ヒットしたアッシャーこそは、マイケルの遺伝子を受け継ぐ正統なるニュー・キング・オブ・ポップにほかならなかった。つまり、グクはアッシャーをパートナーとして迎えることで、第3のキング・オブ・ポップとして王位継承されたと考えるべきなのである。単なるチャートアクション、あるいは入隊中のグクが贈るプレゼント以上の出来事として、音楽的な深みの極致へと一歩を踏み出したわけだ。
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